皮膚科
医療法人 岡皮膚科医院
岡山県倉敷市下庄441-1

TEL: 086-463-5556

アトピー性皮膚炎

アトピー性皮膚炎とは

アトピー性皮膚炎は、かゆみのある湿疹を主な症状とした、良くなったり悪くなったりを繰り返す慢性の皮膚疾患です。

治療の基本は、ステロイド外用剤、プロトピック軟膏、デルコシチニブ軟膏などの外用剤です。外用剤にはそれぞれ特徴がありますので、患者さんの状態にあわせて外用剤を選択します。

皮疹の程度に応じて選択した外用剤を、適切な量、十分な期間使用しなければ、皮膚の炎症をきちんと抑えることはできません。自己判断で治療を中止すると、すぐに再燃してきます。

外用剤の使い方は、初めに必要量を十分に使用し、徐々に減らしていくことです。塗る回数、量、期間、塗り方について適切に取り組むことで、症状をコントロールしましょう。

アトピー性皮膚炎の方はアレルギー体質の方が多く、自宅や職場など環境の問題があることがあります。いい状態と悪い状態が繰り返す疾患ですが、症状の波をできるだけ小さくするために定期的な通院が必要です。

治療のゴールは症状がない状態、あるいは痒みがなくなるか、もしくはあっても軽微で日常生活に支障がない程度になることが目標です。快適な日常生活を送ることを目標にしましょう。

アトピー性皮膚炎の治療のポイント

  • ていねいなスキンケアで清潔な皮膚、肌のうるおいを保ちます。
  • 皮膚の炎症を抑えるために外用薬などによる薬物治療を行います。
  • 血液検査やパッチテストで症状を悪化させる因子を探し、身の回りからできるだけ除きます。

アトピー性皮膚炎の新規治療薬について

当院ではアトピー性皮膚炎の治療薬として、全身療法であるデュピクセント®やオルミエント®、リンヴォック®、サイバインコ®、ミチーガ®、アドトラーザ®による治療を行っています。

中等症から重症のアトピー性皮膚炎の方が対象です。詳しくは以下をご参照ください。

デュピクセント®とは

デュピクセント®とは

アトピー性皮膚炎の治療薬として初めての生物学的製剤です。IL-4とIL-13というサイトカインの働きを直接抑えることで、皮膚の2型炎症反応を抑制するお薬です。
アトピー性皮膚炎の内部に起きている炎症反応を抑えることによって、炎症、かゆみ、皮膚バリア破壊などのすべてに対する効果が期待できます。

デュピクセント®の作用

デュピクセント®の適応となる方

  • 15歳以上でアトピー性皮膚炎の症状が中等症から重症の方
  • ステロイド外用剤、タクロリムス軟膏、デルコシチニブ軟膏を6か月以上使用しても効果が不十分な方

デュピクセント®のメリット

  • 外用薬を塗る量や手間を少なくすることができる
  • ステロイド外用剤の強さを下げることができる
  • 皮膚症状を改善させ、生活の質を向上させることができる

アトピー性皮膚炎の治療では、下記のような状態を維持することを目指します。

デュピクセント®のメリット

デュピクセント®の投与に注意が必要な方

  • 寄生虫感染のある方
  • 生ワクチンを接種する予定のある方
  • 妊婦または妊娠している可能性がある方、授乳中の方
  • 高齢の方
  • 喘息等のアレルギー性疾患をお持ちの方

デュピクセント®の投与により、アトピー性皮膚炎以外のアレルギー性疾患の症状が変化する可能性があります。アレルギー性疾患(喘息、慢性副鼻腔炎、アレルギー性鼻炎、じんましんなど)を合併している場合は、必ずお伝えください。

デュピクセント®の副作用

  • 過敏反応(ふらつき、息苦しさ、心拍数の上昇、嘔吐、皮膚のかゆみや赤み、関節痛、発熱など)
  • 注射部位反応(注射部位に発疹や腫れ、かゆみなど)
  • ヘルペス感染(口周りに発疹)
  • 結膜炎(目やまぶたの赤み、腫れ、かゆみ、乾燥など)

デュピクセント®の投与方法

初回に600mg(2本)、2回目以降は300mg(1本)を2週に1回皮下注射を行います。

デュピクセント®の投与方法

自己注射は院内で2回の指導を受けてから開始することができます。
当院では最大6本(3か月分)まで処方が可能です。

デュピクセント®の治療費

デュピクセント®薬剤費:1本あたり 66,562円
3割負担の方:1本あたり 19,969円(初回は2本:39,937円)

デュピクセント®の治療費

*別途、診察料、処方箋料や、自己注射になれば導入初期加算や在宅自己注射指導管理料が発生します。

デュピクセント®の治療は高額になります。患者さんの経済的な負担を軽減するために、以下のようなさまざまな医療費助成制度があります。

  • 高額療養費制度(自己負担の上限額は、年齢や世帯の所得により異なります)
  • 付加給付制度(健康保険組合等の独自制度)
  • 学生などへの医療費補助制度(大学等の独自制度)
  • 子供への医療補助制度(自治体などにより異なる)
  • ひとり親家庭への医療費補助制度(自治体により異なる)
  • 医療費控除(医療費控除を受けるためには医療機関から発行された領収書が必要です。確定申告をして所得状況に応じた還付金を受けることができます)

医療費助成制度について、ご質問があれば説明しますので、受診の際にお尋ねください。

当院でのデュピクセント®の導入から自己注射まで

  • ①導入前の診察、薬剤の説明
  • ②初回投与(1回目):院内で2本投与、自己注射指導(約50,000円
  • ③2週間後(2回目):院内で1本投与、自己注射指導(約20,000円
  • ④4週間後(3回目):自己注射分の薬剤を処方。3か月分(6本)の処方をします。病院での支払いは約5千円ですが、薬局で12万円(6本)の支払いが必要です(診察料・処方箋料などが別途かかります)。

*自己注射が不安な方は3回目で開始せず、手技が確立してから自己注射に移行します。

自己注射について

自己注射を行うことで、通院の負担が減り、高額療養費制度で自己負担額を減額することができます(所得によります)。

オルミエント®とは

オルミエントRとは

オルミエントは、JAK阻害薬と呼ばれる飲み薬で、炎症の信号を伝える経路のひとつである「JAK-STAT経路」をブロックすることで、サイトカインが受容体に結合しても炎症やかゆみを引き起こす信号が細胞核に伝わらないようにし、アトピー性皮膚炎の症状に関与する複数のサイトカインの働きを抑えることで、かゆみや皮膚の炎症を抑えます。

オルミエントは1日1回、1錠の飲み薬です。
服薬時間の制限はありませんので、1日の中で生活スタイルに合った時間帯に飲むことができます。
通常は4mg錠を1日1回1錠、毎日服用します。
患者さんの状態によっては、半分量の2mg錠に減量することができます。

オルミエントRの作用

オルミエント®の適応となる方

オルミエント®は、今までの治療の治療では十分な効果が得られない成人アトピー性皮膚炎患者さんにお使いいただけます。
具体的にはステロイド外用薬などの抗炎症外用剤を一定期間投与しても十分な効果が得られない15歳以上のアトピー性皮膚炎の方が対象となります。

オルミエント®の特徴

オルミエント®は低分子化合製剤の内服薬で注射に抵抗がある患者さんに適しています。

抗体ができず、中断・再投与して効果が減弱することはありません。かゆみへの効果が早いことが特徴です。

オルミエント®を服用できない方

以下の方は投与することができません。

  • オルミエント®を過去に服用し、アレルギー反応をおこした方
  • 重篤な感染症(敗血症など)にかかっている
  • 結核の方・著しく腎機能が低下している方
  • 妊婦の方、または妊娠している可能性のある方
  • 血液検査で好中球数、リンパ球数、ヘモグロビン値に異常がある方

オルミエント®の投与に注意が必要な方

以下の方は投与に注意が必要です。

  • ヘルペスウイルス感染症が疑われる方
  • B型肝炎ウイルス感染が疑われる方
  • 脂質異常症の疑いがある方
  • 生ワクチンを接種する予定のある方
  • 高齢の方

オルミエント®の副作用

オルミエント®の服用時は、肺炎などの感染症帯状疱疹静脈血栓症間質性肺炎消化管穿孔横紋筋融解症・ミオパチー心筋梗塞脳卒中悪性腫瘍の発生に注意が必要です。

オルミエント®の治療費(3割負担の場合)

オルミエント®の薬価は4mgで5274.9円/錠、2mgで2705.9円/錠で3割負担の場合、4mgを1か月内服すると45,000円程度、2mgを1か月内服すると23,000円程度になります。

オルミエント®の治療費は高額です。

3か月の長期処方をすることで高額療養費制度などを用いた助成制度を受けられる可能性があります(所得によります)。

オルミエントR治療の費用と自己負担額の目安

オルミエントRの開始から継続まで(4mg、3割負担の場合)

  • ①導入前の診察、薬剤の説明、血液検査、胸部レントゲン
  • *胸部レントゲンは当院では施行できないので、近隣のクリニックにご紹介します。
    かかりつけのクリニックがあれば、そちらでも構いません(約2,000円)。

  • ②初回(初診から1週間後)は2週間分を処方します(約25,000円)
  • ③2回目(初診から3週間後):2週間内服して、効果を実感して頂き、全身的な副作用がなければ4週間の処方をします(約45,000円)
  • ④3回目(初診から7週間後):3か月分、処方します。
    副作用の確認のため、血液検査をします(約150,000円)

  • ⑤3回目(初診から4か月後):3か月分、処方します。
    副作用の確認のため、血液検査、胸部レントゲンをします(約165,000円+他クリニックでの診察料+検査料)

*上記の金額に加えて、診察料、処方箋料が別途かかります。
 オルミエントR内服中は半年~1年に1回は胸部レントゲンが必要です。
 血液検査は3か月に1回は必ず行います。

リンヴォック®とは

リンヴォック®
リンヴォック®は、免疫をつかさどる細胞の中にあるJAKという部分に結合して、かゆみの原因となる炎症性サイトカインが過剰につくり出されることを防ぎます。
    皮膚の内部の炎症を抑えることで、皮膚の表面に表れる炎症やかゆみの改善が期待されます。
    かゆみが引き起こす負のサイクルにおけるかゆみ、アレルギー炎症の改善が期待されるお薬です。

    イメージ図

    リンヴォック®の適応となる方

    リンヴォック®は、今までの治療の治療では十分な効果が得られない成人アトピー性皮膚炎患者さんにお使いいただけます。
    具体的にはステロイド外用薬などの抗炎症外用剤を一定期間投与しても十分な効果が得られない12歳以上のアトピー性皮膚炎の方が対象となります。

    リンヴォック®の特徴

    リンヴォック®は低分子化合製剤の内服薬で注射に抵抗がある患者さんに適しています。
    抗体ができず、中断・再投与して効果が減弱することはありません。
    かゆみへの効果が早いことが特徴です。

    リンヴォック®を服用できない方

    以下の方は投与することができません。

    • 重い感染症(敗血症など)にかかっている方
    • 治療が必要な結核にかかっている方
    • 重い肝機能障害がある方
    • 好中球数、リンパ球数、ヘモグロビン値が既定値よりも低い方
    • 妊婦または妊娠している可能性がある方

    リンヴォック®の投与に注意が必要な方

    以下の方は投与に注意が必要です。

    • 感染症にかかっている、またはかかっている可能性がある方
    • 過去に結核や間質性肺炎にかかったことがある方
    • 腎機能障害のある方
    • 高齢の方

    リンヴォック®の副作用

    リンヴォック®の服用時は、ニキビ、肺炎などの感染症帯状疱疹肝障害静脈血栓症消化管穿孔血中クレアチンキナーゼ上昇心筋梗塞脳卒中悪性腫瘍の発生に注意が必要です。

    リンヴォック®の治療費(3割負担の場合)

    リンヴォック®の薬価は15mgで5089.2円/錠、30mgで7351.8円/錠で3割負担の場合、15mgを1か月内服すると42,000円程度、30mgを1か月内服すると63,000円程度になります。

    リンヴォック®の治療費は高額です。3か月の長期処方をすることで高額療養費制度などを用いた助成制度を受けられる可能性があります(所得によります)。

    リンヴォックRの薬剤費の目安

    リンヴォック®の開始から継続まで

    • ①導入前の診察、薬剤の説明、血液検査、胸部レントゲン
    • *胸部レントゲンは当院では施行できないので、近隣のクリニックにご紹介します。
      かかりつけのクリニックがあれば、そちらでも構いません(約2,000円)
    • ②初回(初診から1週間後)は2週間分を処方します(約25,000円)
    • ③2回目(初診から3週間後):2週間内服して、効果を実感して頂き、全身的な副作用がなければ4週間の処方をします(約45,000円)
    • ④3回目(初診から7週間後):3か月分、処方します。
      副作用の確認のため、血液検査をします(約150,000円)

    • ⑤3回目(初診から4か月後):3か月分、処方します。
      副作用の確認のため、血液検査、胸部レントゲンをします(約165,000円+他クリニックでの診察料+検査料)
    *上記の金額に加えて、診察料、処方箋料が別途かかります。リンヴォックR内服中は半年~1年に1回は胸部レントゲンが必要です。血液検査は3か月に1回は必ず行います。

    サイバインコ®とは

    サイバインコ®(アブロシチニブ)は、1日1回服用時間の制限がない、アトピー性皮膚炎の飲み薬です。ファイザー株式会社が製造販売しておりアトピー性皮膚炎の新薬として2021年9月に製造販売承認を取得し2021年12月に発売されました。50㎎・100mg・200mgの3剤形があります。

    サイバインコ®を服用できる方

    ステロイド外用剤やタクロリムス外用剤などで適切な治療を一定期間施行しても、十分な効果が得られず、強い炎症を伴う皮疹が広範囲におよぶ12歳以上のアトピー性皮膚炎の方。

    サイバインコ®の作用機序

    サイバインコ®はJAK阻害薬と呼ばれるアトピー性皮膚炎の治療薬です。JAK1を選択的に阻害することで、TNFαやIL-6による炎症を抑え、アトピー性皮膚炎を抑制すると考えられています。

    サイバインコのはたらき

    サイバインコ®の使用上の注意

    他のJAK阻害剤と比較して悪心・嘔吐といった胃腸障害が多いです。

    腎機能障害のある患者さんは、サイバインコ®の用量の調節が必要です。

    免疫を抑制するため、発熱や倦怠感、皮膚の感染症、咳が続く、帯状疱疹や単純ヘルペスなどの症状に注意してください。

    内服中は他のJAK阻害剤と同様に定期的な血液検査が必要になります。

    サイバインコ®の患者負担・薬価について

    サイバインコ®の薬価は100mg1錠5221.40円、200mg1錠7832.30円です。100㎎を服用した場合1か月で146,199円、3割負担の患者さんでは43,860円の薬剤費となります。200mgを服用した場合1か月で219,304円となり3割負担の患者さんで65,790円の薬剤費となります。
    ※実際に窓口で支払う費用は、血液検査やその他の薬剤費、を合計した金額になります。

    ミチーガ®とは

    ミチーガ皮下注用60mgシリンジ(有効成分:ネモリズマブ)は、アトピー性皮膚炎の「かゆみ」を誘発するサイトカインであるIL-31をターゲットとした日本初、世界初のヒト化抗ヒトIL-31受容体Aモノクローナル抗体である生物学的製剤です。
    中外製薬株式会社により創製され、マルホ株式会社が国内第三相臨床試験を実施し、2022年3月に製造販売承認を取得し8月8日に発売されました。
    ミチーガは、アトピー性皮膚炎の炎症やかゆみの原因となる物質のうち、IL-31(インターロイキン31)のはたらきをブロックすることによってアトピー性皮膚炎のかゆみをおさえる、新しいタイプの薬です。


    名称の由来は、mitigate(軽減する)とitch(痒み)を組み合わせてMitigate the Itch(かゆみを和らげる)の意味で、アトピー性皮膚炎患者さんを最も苦しませるかゆみから解放し、QOLの向上した快適な日常を過ごしてほしいという思いが込められて命名されました。

    ミチーガR

    ミチーガ®の適応となる方

    従来のアトピー性皮膚炎の治療薬である炎症をおさえる塗り薬(ステロイド外用剤やタクロリムス軟膏など)及び抗アレルギー剤を使用して、治療を一定期間行っても、かゆみが改善しない、13歳以上のアトピー性皮膚炎の患者さんが使用できます。
    投与対象となる患者さんは、かゆみや皮疹の重症度を確認する必要がありますのでまずはご相談ください。

    ミチーガ®の投与に注意が必要な方

    以下に該当する患者さんは主治医にご相談ください。

    • 妊娠中、または、妊娠している可能性のある患者さん
    • 授乳中の患者さん
    • 長期ステロイド内服療法を受けている患者さん

    ミチーガ®の副作用

    • ヘルペス感染、蜂窩織炎、膿痂疹、上気道炎などの全身の感染症
    • 皮膚症状の悪化
    • 過敏症や注射部位の内出血、赤みなど

    ミチーガ®の投与方法

    1回60mgを4週間の間隔で皮下投与します。
    ミチーガRの投与方法
    現時点で、自己注射はできないので長期処方をすることはできません。

    ミチーガ®の治療費

    ミチーガ皮下注用60mgシリンジは1本117,181円で、3割負担の患者さんは35,154円(薬剤費のみ)となります。

    アドトラーザ®とは

    アドトラーザ®は2023年9月26日に発売されたIL-13を阻害する生物学的製剤です。
    アトピー性皮膚炎の発症に重要な役割をもつ免疫調節性サイトカインであるIL-13は受容体を介してシグナルを伝え痒みの発生や皮膚バリア機能に異常をおこします。
    アドトラーザ®はIL-13を介したシグナル伝達を阻害することにより、アトピー性皮膚炎に対して効果を発揮します。

    アドトラーザ®の適応となる方

    ・15歳以上のアトピー性皮膚炎の患者さん
    ・従来の治療(ステロイド外用剤など)では十分な効果が得られない患者さん

    アドトラーザ®の投与に注意が必要な方

    • 寄生虫に感染している方
    • 長期ステロイド内服療法を受けている方
    • 妊婦または妊娠している可能性のある方
    • 授乳中の方

    アドトラーザ®の副作用

    • 重篤な過敏症
    • 感染症(結膜炎を含む)
    • 注射部位反応

    アドトラーザ®の投与方法

    アドトラーザ®の治療費


    導入月2か月目以降
    3割負担52,731円35,154円
    2割負担35,154円23,436円
    1割負担17,577円11,718円